昇り降りの日々

学務様が見てる

作り話

一分の余白

「東京タワーに行きたい」 なぜかそう思った。大学で5限の授業を受けていた。でも、東京タワーに行きたい。行きたい。行きたい、行きたい、行きたい!僕は耐えられなくなった。目の前にある過去の学問よりも、その衝動に身を委ねた。 用事を思い出した振りを…

君と息をすること

隣の部屋に「死」が住んでいて、僕の隣には穏やかに呼吸をする君が眠っている。 壁一枚隔てた向こう側は僕たちにとって存在しない世界で、今この瞬間に地球のどこかで命の灯火が消えていることを知っていても、君は明日の朝に目覚めると信じて眠りにつく。 …

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人を殺してしまった。 底のない闇を宿した瞳が、じっと僕を見つめている。 「そんなつもりじゃなかった」、そんなありきたりな台詞が口から溢れ、僕の胸と喉を締め上げた。 彼女が最後に見せた、悲しいような、困ったようなあの表情は瞼にこびりついたまま、…

亡霊

あなたは幽霊を見たことがあるだろうか。 僕は、ある。一人だけ。 僕はずっとその存在を信じていなかった。 ただ周りの人間や世の中にあふれる書籍はみんなその存在を肯定していて、僕の知らないところで闊歩しているようだった。 必死で探してみた。でも結…

黒、透明

「色が失われていく」、という表現がある。 この世に絶望したとき、何かへの関心を急速に失っていくとき、そんな時あなたの心には暗い雲が立ち込め、視界からは色が失われていく。 鮮やかに色づいていたあなたの世界は暗くよどみ、まるで真っ黒の世界に閉じ…