昇り降りの日々

学務様が見てる

つまらない人間

自分が何者なのかをよく考える。
答えはわかっている、何度考えたって結局自分は何者かになりたくて、でも何者にもなりたくない。
どこに向かいたいんだろう。
どうやったって自分は自分だ、そのままであることはないし、すべてが望んだ方向に進むわけじゃない。

卒業以来会ってなかった高校の友人は、何も変わらない面白さを持っていた。
対して僕はあの頃出来たはずの会話は出来なくなっていて、なんとなくあの時の勢いとか、バカバカしさが僕の中から消えてしまったんだな、と感じた。
あの頃に戻りたいわけじゃない、ただ自分がつまらなくなった、それを受け入れるだけ。

初めて行ったバンドのライブ。
過去をなかったことにしない、でも今を見つめている、未来を辞めない覚悟を歌に乗せていた。
僕はそのライブで、3時間ただ立ち尽くすしかできなかった。
煽りに対しても口を開けることなく、ただ耳を殴り続けるライブハウスの爆音にひるみ続けるだけだった。
あんなに真っ直ぐ、僕の心に刺さったはずの歌は気が付いたら消えていて、代わりに胸の中には穴の開いたぼろぼろの心が残っていた。

週末になるとぼんやりとした不安が、僕を襲う。
このままでいいのか、こんな人間でいいのか、将来は?誰が僕を見つけてくれる?僕はつまらない人間になってしまったのか?!
眠ってしまうと何かに追いつかれてしまう気がして、布団の中で光る手元を見続けている。
でも大丈夫、明日になれば僕は別人。 明日もぼんやりとした気持ちから逃避するように満員電車に乗り、ビルのXX階のボタンを押して、凍ったXXの街を見下ろす。
秋よりも透き通った空と遠くに見えるXXXX、その空気を無慈悲に遮るガラスの内側でまだほとんど誰もいない部屋の扉を開ける。
起動したパソコンの前でゲームの中のキャラクターと対峙する。彼らは与えられたパラメーターの通りに動き、でもユーザーの望む通りの動きを求められる。
その姿に自分の姿を重ねる。でもそれも一瞬。
キーボードを叩いている時間は、社会になれている気がして、自分の携わったものが形になっている、それが恐ろしく気持ちがいい。
コンテンツの人気がまるで自分のものになってしまうような感覚。
僕がしたことなんて本当に本当に些細なことでしかないのに。
僕は何を考えたわけでもないのに。
僕は何もしていないのに!

ああ、なんと素晴らしき労働、この間は雲が分厚く、隙間なく心全体を覆って、何も考えなくて済む時間。
こうやって毎日を消費して生きていく。なんだ、社会でやっていくってこんなに楽ちんだったんだ。
でも本当にいいのか?ここが、ここが居場所なのか?
僕は毎日コピペをしているだけ。
データの再生産、リサイクル、なんだか環境によさそう。
だってさ、こんなのただのフリーターの戯言、社会を知った気になっている子供の妄言に等しい。
でも大丈夫だ、この手は地獄の釜の蓋をしっかりと掴んでいる。
さあ安心して、今日にさようなら。おやすみ、世界。