もしお菓子でできた家が本当にあったなら、あっという間に虫に集られて、見るも無惨な姿になってしまうだろう。
昔の詩人曰く、女の子は砂糖とスパイス、そしてステキなもので出来ているらしい。
きっとそれは一部本当だろう、美しい彼女はまるで砂糖菓子のような香りがするのだ。
もし彼女の心が、体が、髪の一本までそんなもので出来ているとしたら、私はそれに集る虫の一匹なのかもしれない。
いつか彼女を食い尽くして、ボロボロにしてしまう。
美しいままでいてほしいという願いとは裏腹に、私を飢えさせる本能が隙間から顔を出す。
だから毎日砂糖を溶かした薄い水で飢えを癒して、彼女を遠くから眺めている。
私はいつまでこの渇きに耐えられるだろうか。
もし魔法が使えるなら、私も彼女と同じ体の作りになってほしい。
たった一晩でも彼女と対等に過ごせたら、その思い出を胸に、私を惑わす火に身を投げるだろう。
もしくはいっそ、彼女を灯火に変えてしまおうか。
そうすれば私は彼女の命の息吹きの中で、その礎として消えていける。
そんなことを考えているうちにまた夜が明けて、甘い香りが私を誘惑しに来る。