昇り降りの日々

学務様が見てる

柚子の花のような

”汚れちまった悲しみに、なすところもなく日は暮れる”
そんなことを言った人がいるらしい。
なすところもなく日も暮れたあとのこの時間、虚無をするのが嫌で本を読んだり、ゼミの予習をしてみたりする。
それでもやっぱり悲しみ、あるいは虚しさが消えなくて、ぼんやりとした不安が僕の心を更に暗くする。

僕は透明なんだ、と一週間前に書いた気がする。
それはきっと正しくて、やはり僕は誰にも見えていない。
でも一箇所、心だけが透明になってくれない。

僕はかつて心の中も透き通っていて、自身も鮮やかに色づいていた。 やがて時が経つに連れ自身を彩っていた色は徐々に染み込み、混ざり合って心を灰色に染めてしまった。
かつての内と外が裏返ってしまったのだ。

透明な何かにずっと憧れている。
いつか持っていたそれを、取り返したいと思っている。
でも僕は透明の先を知ってしまった。
僕はくすんだ心の行き先の見当がつかず、真っ暗な世界をさまよっている。
過去の出来事を清算しようなんて気は無い。
仮にそうして何になる?振り出しに戻ってもまた同じゲームが始まるのに。

ずっと「何か」に憧れていて、でもその「何か」がずっとわからずにいる。
それはきっと、「透明」でも無いんだと思う。 僕の代わりに「何か」になってくれる人間を生産しても満足できず、明日になってみれば出来損ないの子であったことに気づきゴミ箱に放ってしまう。
僕は僕の代わりをずっと探している。一から僕をやり直してくれる誰かを。
だからわかりやすく「女になってみたい」と言ったりするし、誰かに自分の未来を託したい気持ちになってしまう。

僕は自分になりたいのではないか、そう思うようになった。
心臓の下の方に溜まった痛みが、脈打つたびに身体に広がっていく感覚を味わっている。
この痛みが再び心地よく感じられる日がいつかやってくると信じて、また自分の代わりを産んでいる。