昇り降りの日々

学務様が見てる

消える手

指の先が痛い。

空気そのものが冷える寒さは、スマホを持ちながら歩く現代人に容赦なく罰を与える。

諦めて手をポケットにしまって、回りの景色を眺めながら歩く。

大学の中はいつにもまして観光客ばっかりで、少しだけうんざりする。

痛くて手をしまったのに、タバコを吸うためにまた指先を外気にさらす。

これくらい冷えていた方がタバコは美味しい。

何書きゃいいかわかんなくなってきた。

雨は降っていない、乾いた冷たい空気のなかで歩くのが好きだ。

鼻の奥を突き刺すような痛みと、お気に入りのマフラーと、勢いよく吸い込んで苦く燃える煙と、そのあとに深呼吸をしながらする散歩が好きだ。

次の時間まで余裕があるなかで、一歩の大きさを変えてみたり、踏み込むまで浮遊する時間を伸ばしてみたり、橋の上で回って、くるくると巡る池のほとりで本を読む。

ずっとこのままでいたいなぁ、誰ともさよならをいいたくない。