昇り降りの日々

学務様が見てる

I love you のその先で

愛が足りてない。
絶望的に足りていない。
愛が形を変えたものが紙に巻かれていたり缶の中に詰まっていたりするけれど、こんな海外の片田舎でそんなものは手に入らない。

一日中部屋で作業をしながら悲しくなってしまった。
別にこれは僕の成したいことではなくて、なのに約束をした未来のために走ってる。
その未来もきっと、3年も持たずに壊れる。

でもこの瞬間を紡がなきゃ、僕の社会での道はボロボロと崩れていく。
こんな僕でもコミュニティの中で生きていけるように先人たちが用意してくれたレールの上を、僕はゆっくりと前に進んでいる。
常日頃から幸せを感じていたいわけじゃない。
けれど、何年も前の、おそらく中学生の頃から感じていた、「心臓の裏を掻きむしりたくなるような愛」が足りなくなる感覚がたまにフラッシュバックする。
何に憧れてそうなったのか、何もかもが理想的に進む頭の中で生きてきた僕は、世界のどこかにそれが隠されているとまだ信じている。
だから僕は文字を書く。
書いて、世にばら撒く前にデータの形を失って消える。

愛が足りない、喉の奥が音を立てて空気を渇望する、少しずつ足の表の方から血が抜けていくような感覚が、僕の体の睡眠不足を伝えている。
帰ってきた、ここは僕のいたい地獄、幸せな地獄、ナイフで少しずつ心の形を削り取って、そこに少し塩でも塗って、軽くて曖昧な痛みを楽しんでいる。
ちょろい僕の心、スイッチを押せば簡単に首をかきむしれる。
痛みを感じずに肋骨の真ん中から切り開けたら、この心臓を雨に晒して、その脈を感じられるのに、なあ。

僕が欲しい愛は「僕とあなた」の愛ではなくて、「あなたと誰か」の愛なんだよ、だから絶対に手に入らない、だってそこに僕が入る余地はないから、紙の上で繰り広げられるそれをずっと眺めている。
さあ行け、そこに僕はいないけど。僕の生きる現世に、君たちはいないけど。
けど僕が10年も前にノートの切れ端に書いたあのお話に、それはまだ存在している。
世界に存在しないものを、僕は一生かけて取り戻す。
仮に現世にそれがないなら、命を差し出せば手に入るなら、いくらでも差し出す。
いつかその器に僕の心が収まる日を夢見て、茶色い箱の幸せを肺に収める。
少しでも心に近い部分から流れてくる物質を、脳が喜んで貪っている。