昇り降りの日々

学務様が見てる

雨空に願いを

七夕の星には色々な思い出がある。

いつか誰かと見上げた空を何となく見上げて、天の川があるはずの方角には雨雲しかない。

今となっては方角もわからなくなったので適当な方向を向いてるだけだけど。

 

思えば、僕の人生は常に星に導かれていた気がする。

一番星、オリオン座、南十字、そして夏の大三角

意味もなく海の見えるあの丘に行っては、白鳥座が向かう先に何度も同じ事を唱えていた。

弱々しいアルタイルの光を、何の目印もなしに今の僕は探せない。

それくらいに空を見上げなくなった。

 

雨に濡れて帰る夜の道で、そんなことを思って空を見上げてみた。

そういえば雨の日に空を見上げたことがなかった気がする。

自分の天頂から、放射状に雨が降ることを初めて知った。

イヤホンを外してみると、絶え間なく響くサーっという音に、たまに混じる水滴の落ちる低い音が不規則に響く。

よく耳を澄ましてみるとサーっという高い音にも草葉を弾く音、地面を叩く音、排水溝を流れる水の音が混じっていて面白い。

 

帰り道の最後の坂道で、ひとつだけ枯れずに残っているガクアジサイを見つけた。

茶色く朽ちていく回りの花々のなかで一際映えて、いつかこんな風に自分もいつか花が咲く日を待っている。

待っているだけでは、それはやってこないけど。

 

この雨がやんだら、今夜の一番星がきっと見えたら、その逢瀬が僕にも許されますように。

この七夕を少し過ぎた願いが、きっと叶いませんように。

それでは夢でお会いしましょう、おやすみなさい。