昇り降りの日々

学務様が見てる

特に変わりなく

働き始めてもうすぐ半年経ち、経験すべき業務は一通り経験した。
うまくやれてるかはわからないけど、何が必要かは少しずつわかってきた。

顔の見えない画面の向こうの人とチャットして、適当に発注したり案を出したり、毎日歯車としてぐるぐると回っている。
少しずつ僕も変わってきた。
社会に求められる「社会人」になる努力をそれなりにしてきて、こびへつらって面白くもない話でニコニコ笑っている。
変われたんだと思い込んで週40時間を耐え忍んでいる。

だけどふとしたときに準位が落ちて、何もできない自分が現れる。
何も変わっていない、ちょっと人に話しかけるだけで動悸がして、必要な話題を何週間も持ち掛けられずに心の中で不安だけを育てて、自分の時間を過ごす僕を地の底にたたきつける。
仕事は違う何かを演じているから割り切れる、だけどそうじゃない時間に自覚する現実は何倍ものパワーで襲い掛かってくる。
上からやってくる人間が怖い、文字の羅列が怖い、見えない目線が怖い、過去の自分が遺した爆弾が日を追うごとに大きくなっていく。
足でえいやと踏みつけてしまえるくらいの小さな不安が、臆病な僕の水晶体を通るとゴジラみたいな巨大な化け物に見える。
頭を掻きむしりながら「ごめんなさい」を唱えて、逃げるように惰性で煙草を吸う。
目をそらせば見えなくなる、見えなくなればいないものと一緒、だけど少しずつ化け物は僕に迫ってくる。
助けてと誰に向かって言ってるのかわからない、助けてほしいのかもわからない、だけど吐き出す息でのどを震わせることでしか、たった今の僕の心は助からない。

誰かが座るべきだった椅子に座って、正体を隠して生きている。
どこか遠い未来を見ている人たちと、ただ目の前に見える壁の前でゆらゆらと揺れるだけの自分を比較する。
昔の自分ならそこのない沼の底までこのまま沈んでしまうのかもしれないけど、今の僕はこの先の40年と少しを適当に生きるすべを探すので忙しい。

この椅子でただ煙を燻らせる自分の情けなさと、そんな僕に勝てなかった人間を見下す汚さと、そんな僕を見下す視線におびえる心が同居して、脳みその前のほうを鈍らせる。
寝て起きてしまえばこんな支離滅裂なポエムもゴミになるくらいには諦めが良くなった、このまま心が震えなくなる時まで時間を積み重ねて、試合終了を待っている。